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中国日常食史の研究

中国日常食史の研究

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中国日常食史の研究

著者
中林広一
出版社
汲古書院
出版年月日
2012.10
価格
¥5,500
ページ数
286
ISBN番号
9784762929892
説明
 本書は「漢族の食卓には日常的にどのような食事が供されたのか」という疑問に答えようと試みたものである。より具体的に検討の対象を明示すれば、地域は華中・華南地域を、時代は清から中華民国の時期を、主体は農民を始めとする直接労働者を中心として取り扱っている。こうした庶民の日常的な食事は研究テーマとして極めて卑俗で取るに足らないものと見なす向きもあろうが、本書における検討作業は食物史研究のみならず、農業史研究においても一定の意義を有するものである。
 前者について言えば、宴会や節日といった非日常的なシチュエーションにおける食事や富裕層による贅を尽くした食事のみに関心が集まった従来の研究に対し、これまで注目されることの少なかった庶民の日常食の実態を提示した点に意義がある。これは単に研究の空白を埋める作業というだけにとどまらず、社会の大勢を占める食物消費の具体像を明らかにすることで前近代中国における経済のあり方を考えるための手がかりを提供するものでもある。また、後者について言うと、従来の農業史研究がコメの生産に重きを置きがちであり、それ以外の作物が果たした役割については等閑視されてきたが、それらの作物の重要性を確認した点に意義が求められる。
 本書では華中・華南社会において利用された作物としてムギを始めとする各種穀物に加えて、ソバやサトイモ・ヤマイモといったイモ類など従来顧みられなかった作物を採り上げているが、日常食として扱われるこれらの作物に目を向けることで、農業生産の場でもこれらの作物が一定の存在感を有していたことを明らかにした。そして、コメとこれらの作物はフィルムのポジとネガに例えられる関係でもあり、本書はソバやサトイモの姿に焦点を合わせることで、これまでの研究では見えてこなかったコメの性格を明らかにしている。こうした本書の内容は読者に中国農業史の新たな一面を提示することになろう。
※出版年が古いので新本ですがヤケ・シミ・痛みがございます。