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清朝宮廷演劇西遊記の研究 岳小琴本『昇平宝筏』を中心に

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清朝宮廷演劇西遊記の研究 岳小琴本『昇平宝筏』を中心に

著者
磯部彰
出版社
汲古書院
出版年月日
2025.01
価格
\9,350
ページ数
248
ISBN番号
9784762967481
説明
清朝宮廷演劇文化の大いなる発展を説く宮廷演劇作品の最新研究。
【序「清朝宮廷文化と社会」より】(抜粋)

 北京の紫禁城は、明清両王朝の王朝文化の拠点であり、今日なお壮麗な建築物が軒を連ね、往時の栄華を伝えている。明清の文化やその特徴を示すものを考える時、一つに演劇文化を挙げることができる。その淵源は、宋金時代にある。のちに、漢民族の明王朝、北方諸民族の清朝によって継承され、代表的な文化の一つとなり、中国人の共同体的意識形成にも一定の役割を果たして来た。(中略)
 演劇は、もともと、祭祀的要素が強い芸能であり、娯楽性を兼ね備えていたが、宋金時代の萌芽的段階では、聖人の教えとは一線を劃すような扱いを受けて来た。そこには、白話文化がまだ成熟してはいなかったという背景があった。その後、元代に伝統文化への意識変化が起こり、文言と口語を交えた演劇文化は社会に定着し、多くの人の参画を得た。(中略)
 清朝前期は、明朝時代の宮廷演劇や地方演劇が明末の戦乱より復活する時期であるとともに、宮廷演劇などが独得の発展を踏み出した時期であった。宮廷演劇は、清朝に限らず、明朝以前にも見られたが、清朝におけるその位置づけと役割は歴代王朝には窺えない点も少なくない。国家儀式に演劇が取り入れられ、統治の道具とした色彩を持つ点はその最たるものである。
 明清王朝は、現代中国の形を考える上で重要な意味を持つ。中華人民共和国は、中華民国を大陸から駆逐して建国された新たな国家であるが、漢族の王朝であった明朝の文化や意識を引き継ぎ、満洲人の帝国である大清グルンの国土をもとに形づくられた。歴史的経緯から、中華人民共和国は、政治・文化・習俗など多方面で、今日なお明清時代の後期封建社会の残滓を留める。現代世界での中国の政治や経済方面で占める大きさを考えれば、現代の漢族地域と周辺諸族地域との関係を見すえつつ、明朝から清朝、そして、民国後における中華人民共和国の先行形態として把握する必要があろう。この観点から、王朝の中枢である宮廷で行なわれていた演劇の役割を適確に捉えることは、現代社会に到る中国の構造の一面を知る大切な手懸りになろう。
 本研究は、清宮廷文化に焦点を当てて、宮廷作品のテキスト研究のみならず、作品の持つ政治的、文化史的背景などを探り、清代文化研究の空白部分を補塡し、現代中国社会をより適確に理解することを目的としている。